ども、せっかく保険会社に就職を決めたので、その後も注目してニュースを追ってました、エンです。
 ちとマジメにエッセイ風味で書かせていただこうかと。
 

 保険等の不払いの本質には、保険の複雑さ、知識の差による相互不理解によって現れている面があるのではないでしょうか。

さて、生保・損保の不払いの判明しているだけの額は巨額です。
生保の不払い
企業名
発覚件数   
不払い額   
今後予想される件数

日本生命(団体保険を含む)
112,699件
75.3億円
約39万件

第一生命
6,856件
22.39億円
約7万件

住友生命 
17,451件
40.06億円
約3万件

明治安田生命
34,326件
24.41億円
約9万件

富国生命
3,986件
5.43億円
約4万件

太陽生命
3,315件
1.79億円
約1000件

大同生命 
3,156件
30.48億円
約7万件

三井生命※
14,131件
14.13億円 
約4万件


損害保険会社 判明部分のみ
東京海上日動火災保険
8万4785件
68億5400万円

あいおい損害保険
11万1992件
51億9400万円

三井住友海上火災保険
5万1486件
54億3300万円

ニッセイ同和損害保険
2万1792件
約44億8000万円

他社についてはまだ調査中

 と、これだけの額があります。
 我々一般人から見ると巨額なのですが、損保はまだしも生保にとってはそこまで痛い額ではありません。と言うか痛い額であっては困ります。
 さて、生保に決まりましたので生保の視点で書きますが、生保の本質は相互扶助です。詳しく説明すると長くなるのですが、要は
「みんながお金を出し合って不幸な人にお金が届くようにする」が主目的です。
 その集める役と配る役をするのが保険会社です。ですので一般的に生命保険相互会社 となっています。一部例外として株式会社化しているところもありますが。
 で、保険会社は集めて配るだけでは能がありません。お金を集めて配りなおす前に、その間に運用して資産を増やしてちょぴっと色をつけてお返しするのが生命保険会社の基本スタイルです。
特に生命保険ですとロングスパンでのお預かりと言う形になるのでこのような事ができるわけです。
 ですので、各社の総資産から言いますと今回の不払いの額は0.0数%ぐらいの額です。生命保険会社にとってこの不払いは、金銭的痛みよりも、信用力低下の痛みの方が大きいのです。
(ちなみに、損保の本質はリスクカバーです。ちょっと生保とは方向性が違います;)

 さて、今回巷で騒がれている不払いですが、いくつかのケースをまとめて報道されてますのでややこしいのです。
 分類するとだいたい3つのケースに別けれます。
1:不適切な不払い
正当な理由に基づかずに保険会社が支払いを拒否していたもの。一昨年問題になり、明治安田生命保険や三井住友海上火災保険の行政処分の理由となっている。
具体例:
・告知事項とは因果関係のない保険事故にもかかわらず、告知義務違反を理由に支払いを拒否
・医師からの確定診断がない(したがって被保険者に病気の認識がない)病気を告知していなかったとして、支払いを拒否
医師に確認することなく、保険責任開始以前に発病したものとして保険会社の免責を適用
・告知義務違反による契約解除が可能な期間を過ぎているにもかかわらず、保険会社が契約を解除

 など、これ等は保険会社の元来の目的を外れていますので厳しい処分が下されました。

2:契約の不備を理由にする支払い拒否
 本来、保険会社が正当な理由を挙げて支払いを拒否する事は違法ではありません。ただ、これは契約時に悪意を持って契約した場合等のそれなりの正当な理由が必要です。
 しかし、今回問題になっていた事件は正当な理由を挙げなかったり、些細な理由をもって支払いを拒否したりすることです。
 全ての会社がそうだとは言い切れないのですが、バブル以降最近までは景気があまり良くなく、保険会社も資産運用益激減でこすっからい事をしていたのです。
 それ以外にも、保険会社は各社新規契約を取る為に必死で動くので営業職員は契約の不備があろうとも契約者にその旨を伝えずに契約をとり、それを理由に支払いを拒否するという事例もあります。要するに、悪意の営業職員が、善意の第三者に契約を勧め、会社(善意か悪意かはわからないが、限りなく黒に近いグレー)と契約をさせ、会社はその支払いを拒否すると言う事です。
(ここでの悪意・善意は知っていた・知らなかったと言う意味で使っています)
 このような、泥臭く旧時代的なシステムの膿が今白日の下に晒されているのではないでしょうか。今後同じような事は各社共に出来ないし、しようとは思わないでしょう。
 失墜した信用を回復させられないような会社は生き残る道がありません。

3:契約者の未請求
 生命保険の基本は死亡保障です。これが主契約と言う事になります。それに病院・病気の特約ですとかが付随しているわけです。
 また金融自由化により第3分野が損保・生保に開放されました。第3分野とは主に生命保険(第1分野)でも損害保険(第2分野)でもなく、その中間に位置する保険商品のことです。例えばガン保険、介護保険などが挙げられます。

 主契約については請求があれば直ちに支払われます。例えば、病気の一時金などは主契約ですので直ちに支払われます。ですが、特約として付随している通院保障等は別口で請求しないと払わなくていいと保険会社は認識していました。また加入者は請求をしなくても支払われるものだと思っていました。ここに知識の差による相互不理解があります。
 要するに、これは知識がない為に契約者が損をしたのです。この実態が長い間放置されていたのですが、金融庁により指導を受け「請求がなくとも支払われなければならない」と言う認識に改まりました。その認識を持っていなかった保険会社各社が過去5年間の不払いの実態を調査したのが今回の件となります。

 このケースの不払いの実体と言うのは2つの面があります。一つ目の面は、契約者の知識不足です。保険は契約によって成り立ちます。非常に解り辛く細かい項目が多いのですが、契約者はそれら全てを把握していないために、本来受けれるものを知らなかったのではないでしょうか。やはり、契約者側はしっかりと自分が入っている保険について知識を持つことが必要です。知識がなかったばかりに損をすると言う一例だと思います。
 二つめの面としては、保険会社は人に物を解りやすく教える能力が欠如していたのではないでしょうか。お客様に契約内容について解りやすく教える力、コミュニケーション能力、が欠如していた、もしくは教える気がなかったのが問題だったのでしょう。相互扶助といえど保険会社は企業です。やはり、規模が大きくなればなるほど、形式を守らない人に対して冷たい一面があるのでしょう。しかし、事態は保険会社が思っていた以上に逆風が吹いておりました。それを認識していたなかった保険会社にも大きく過失があると思われます。煩雑な手続きをしなくてはならないと言う事は、簡単に管理するノウハウがなかったとも言えます。また、保険会社の支払わなければならないレベルの認識と、今回の金融庁の指導の支払いのレベルが違っていたことも保険会社の認識不足といえるでしょう。

 今後、現状のような保険会社に有利な状況は無くなると思われます。私が内定をいただいた生保の対応パターンとしては、3つの方法を推し進める方針だそうです。
1、保険金支払い部門に資格制度を導入し、より知識を高めた人間達で支払体制を構築する。
2、支払要件について2人体制で別々に提出し、より客観的な評価をする。
3、営業職員・代理店への教育体制の強化、また契約書などのわかりにくい部分の修正を行っていく。
 だそうです。
 総資産ベースでみると不払いの額は約0.05%、また近年の経常収益ベースから見ても約8%と、保険会社にとって大きな額ではありません。むしろこの信用力の低下により今年の落ち込み額の方が大きいのではないでしょうか。
 不払いの問題の本質は、金融庁の意向を理解できなかった保険会社の認識不足・契約者への説明不足による契約者の知識不足が招いた事態だと思われます。
 今後、契約数・利益至上主義の保険会社は淘汰されていくと思われます。時代の風を読み認識を改める事が必要となるでしょう。

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